競泳の池江璃花子選手が白血病であることを公表、というニュースがありました。
熱心に水泳を見たりしない私でも、とても衝撃的で、一瞬息が止まるくらいでした。
有名人や芸能人がそのニュースに対していろいろな反応をしてます。
ご自身も白血病に罹った渡辺謙さんはコメントを発表していました。
渡辺謙さんや女優の吉井怜さんのように、復帰して活躍している方もいらっしゃいます。
池江選手はまだお若いですし、医学も日々進歩しています。
病気を克服できますように、とお祈りするばかりです。
骨髄バンクに注目が集まっています
白血病の有効な治療法の1つに骨髄移植という方法があります。
健康な人の造血幹細胞を患者さんに移植して、造血機能を回復させるのです。
池江選手のニュースを見て、骨髄バンクに注目が集まっているようです。
実際にドナー登録をする人も増えているようです。
『人のお役に立ちたい』と思っている人はたくさんいると思います。
私だってその一人です。
この記事のタイトルに書いたように、水を差すわけではないですが『ドナー登録は慎重に』とお伝えしたいので、私が骨髄バンクに登録したときのお話を書いてみたいと思います。
まず献血の話
身体が元気で丈夫な私。
『お役に立てるのなら』と、10代から献血ルームにもよく出掛けていました。
200mlや400mlの採血をするのではなくて、成分献血というものをずっとしていました。
成分献血とは、一旦採取した血液から必要な成分(血漿と血小板)だけとっていって、最も回復が遅い赤血球は戻してくれるというものです。
所要時間は1時間くらい。15~20分で済む全血献血より少し時間がかかります。
献血ルームに行くと、事前検査をして、献血に適した血液であるか調べます。
血液の結果が出てからよく「自己申告された体重って、間違ってないですか?」とか「最近急に体重増えたとかないですか?」と聞かれていました。
その場で体重を測らされたこともあります。
あまりにも何度も言われるので「どうしてそんなことを聞くのですか?」と質問してみました。
私の体重がもっと重かったら、もう1サイクル機械を回して、さらにたくさんの血漿や血小板をいただこうということだったようです。 ←男性と同じ扱い…(^_^;)
それくらい、とても健康な血液の持ち主だったようです。
献血100回達成記念にいただいた ガラスの杯です(^_^)
そんな元気な血液の持ち主である私が、骨髄バンクに登録しようと思うのも、ある意味、自然な流れでした。
よく考えずにドナー登録
気軽な気持ちで献血ルーム経由で申し込みをして、血液センターで採血。白血球の型(HLA)を調べました。
いつもの献血前の検査と同じような感じであっさりと終わり、ドナーカードというものをいただいて、家に帰りました。
当時はこんなかわいいカードじゃなかったような。
登録したことをすっかり忘れていたある日。
骨髄バンクのコーディネーターを名乗る女性から、家に電話がかかってきました。
「移植を希望されている患者さんと、白血球の型(HLA)が適合したので、近いうちに検査に来て頂くことはできますか?」
当時、私はまだ学生、時間の融通はききます。
家族の承諾が必要なようで、その時初めて家族に、骨髄バンクのドナー登録していたことを話し
「型が合ったかもしれないから検査に行ってくるねー。」
と言いました。
両親は大反対。
私は世間知らずだったので、気軽な気持ちで登録してしまっていましたが、両親は『健康そのものだった人がドナー登録をし、骨髄採取をしたことで死亡した話』など、骨髄採取のリスクについていろいろ話してくれました。
何日か話し合って、結局私は次の検査に進むことにしました。
ドナー登録が少なかったずいぶん昔のことなので、型が適合する人が見つかる可能性は今よりも少なかったはずです。
適合した人がいるという事実を、もし患者さんがすでに知っていたら。
そして、私が患者さんの立場だったら。
そんなことを両親に話し、理解してもらいました。
(今思えば、親不孝な子どもです。 )
血液センターに行きました
数日後に、血液センターに行きました。
夕方で一般の人は誰もいなくて、がらーんとしています。
まず初めに『骨髄移植とは、そして骨髄採取までの流れ』みたいなビデオを一人で見ました。
その時に、両親が話してくれたさまざまなリスクを改めて知りました。
ビデオを見終わった後、コーディネーターの女性が丁寧に説明しながらも「お若いのに立派なことです」など、やたらと持ち上げて、褒めてくれたことは、今でも思い出せます。
ビデオを見たことで私の気持ちが萎えるのではないか、という心配があったのかもしれません。
次にお医者さんの問診があって、私の意思の最終確認の後、HLAの型を調べるために採血しました。
結果は後日ということで、その日は家に帰りました。
骨髄バンクからの電話
何日かして再び、骨髄バンクから電話がありました。
検査の結果、今回は患者さんの詳細な型と合致しなかったという連絡でした。
両親に話すとほっとしているようでした。私は少し複雑でした。
コーディネーターさんの説明の中で、兄弟姉妹でも型が適合する確率が1/4しかなくて、親子の間ですらほとんど合わず、ましてや他人と型が合致する確率は数百人から数万人にひとりの割合であることは聞いていました。
そんな確率の中で私の型と合致したというのは、患者さんにとっては奇跡で、希望を持ってくださったかな、と思っていたからです。
最終的に型が合わないとわかったことで、申し訳ない気持ちになり、とても残念に思ったのでした。
今、依頼が来たらどうするのか
この時にわかった詳細な型が骨髄バンクに登録されたと思いますから、次にもし電話があれば、結構な確率で骨髄採取に近づくのでしょう。
すっかり大人になり、リスクを含めたいろいろな情報が知られるようになった今、私は骨髄を提供するのか。
改めて考えてみると、両親が反対していた気持ちもわかるようになりました。
もう気楽な学生ではありませんし、仕事をお休みすることはインストラクターとしてどうなのか、また職場の理解を得られるのか。
依頼の電話はありませんが、お役に立ちたいという気持ちと、現実の間でゆらゆらするこの頃です。
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池江選手の件があって、優しい気持ちと勢いで、ドナー登録をしようと思っている方もいらっしゃると思います。
私も何も考えずに詳細な検査に行こうとしたところ、家族の猛反対に遭いました。
「私の身体だし、人の役に立つことをしているのだから、別にいいだろう」と呑気に思っていた私には、家族が反対することなど、全く予想できていませんでした。
血液センターで見たビデオによると、すごい確率で適合したら、例えば1か月前くらいから身体の準備を始めないといけませんし、3泊4日くらいの入院もあります。
全身麻酔の手術ですから、麻酔事故もゼロとは言い切れませんし、合併症も起こるかもしれません。
何か月も痛みが残るなどの後遺症も報告されています。(有害事象のページは『工事中』で、今は詳細を知ることもできません。)
ドナー登録をする人が増えることは、移植を待つ患者さんやご家族にとっては希望の光です。
しかし、見知らぬ誰かを救うために、自分のいまの健康が脅かされる危険性もあるのです。
いろいろな情報を知って、熟考ののちに、ドナー登録するのかを決めた方がいいのではないかと、私は思います。
誰かのお役に立つ方法として、献血もあります