※ 2024.6追記
お問い合わせあったので。
この記事をプリントするのはご自由にどうぞ。
ただ、現地で取ったメモを文字起こししたので、細かいニュアンスの違いや、聴き間違いがあるかもしれません。その点はご了承ください。(配信動画見るのがいちばん正確で確実です)
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ヨガの学校を卒業して、もうずいぶん経ちます。
学びは今も続いています。
毎年学会が開催され、卒業生や関係者がヨガについての論文を発表します。
学会自体にもテーマがあって、それに沿った著名な先生方の講演で学ぶこともできます。
前泊して観光旅行しながら学会に参加するのが毎年の楽しみでした。
しかし、2020年のコロナ以降は現地参加をやめていました。
今年は大阪。オンライン参加を選択することもできましたが、久し振りに現地参加することにしました。
今年のテーマは【緩和ケアとヨーガ療法】
ヨガが補完代替医療としてホスピスや病院に入ることができているので、それの研究報告(デモンストレーションもあり)+ 未来のお話です。
講演して下さった先生ごとに、学会2日分のメモ書きを文字起こし。
読み直しても、なんか長いし、わかりにくいのですが、私がわかればそれでいい的な(笑)
prtimes.jp
![](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/n/nikomakoyoga/20240527/20240527134235.jpg)
初日の朝。これからはじまるとワクワクドキドキしています。
緩和ケアの可能性 / 森一郎先生
森一郎先生は兵庫県川西市の協立記念病院の緩和ケアの医師です。
緩和ケア病棟 - 協立記念病院
JRの福知山脱線事故のトラウマケアをきっかけにヨガとつながった森先生の講演。語り口や佇まいがやわらかく、ホスピスの患者さんも心安らぐだろうなと思いました。
ホスピスのケアにヨガを取り入れて下さっていて、マニアックになりがちなヨガの言葉ややり方を、わかりやすく取り組みやすい形に変えて医療界や世の中に伝えて下さろうとしているのを感じました。
『尊厳』という言葉が何度も出てきました。
ヨガで体の緊張と弛緩を感じる&呼吸法でリラックス感を得ることで心理的にも安定し、瞑想で自己の客観視。
それは患者さんの尊厳を守り、自分を取り戻すことにつながっているというお話で、ヨガを高く評価して下さっていました。ホスピスに関わるヨガの先生方の明るさにも感心されているようです。
『ディグニティセラピー』という言葉も出てきました。予後が限られた人が周りの人への想いなどを言語化し、医療関係者の手を借りて手紙にし(文字化)、家族など残された人と共有するという取り組み。
ヨガでリラックスすることで内観でき、言語化も進むと思うので、ヨガとディグニティセラピーは親和性が高いのではと思いました。
緩和ケアとヨーガ療法 / 木村先生
ヨガの成り立ちやどういう技法、聖典を使って緩和ケアに溶け込もうとしているか。関係者である私たちには耳にタコのお話(笑) 来場されていた医療関係者の方々にはどう映ったのでしょう。割とマニアックなお話を超高速で(笑)
ヨガがもたらす抗酸化作用の研究のお話や、アイソメトリックヨガでミエリン化(脳細胞のつながりが強化される)が進み、神経のボリュームが増えることが科学的に証明されたそうで、それは認知症の予防にもというお話も。
実際にホスピスにもヨガは入っていますが、患者さんの尊厳を高めるためにヨガが使えるというお話もありました。
緩和ケアの現在とこれから / 木澤義之先生
木澤先生は筑波大学の先生。日本緩和医療学会の理事長をされています。
ヨガとつながりのないお立場での講演。
緩和ケアについてわかりやすくお話をしてくださいました。
緩和ケアとは
・痛みやつらい症状を和らげること
・生命を肯定し、死は自然な過程であること(死を早めよう、遅らせようとはしない)
・心理面、スピリチュアリティをサポート
・最期まで能動的でいられるように
・患者だけでなくその家族に対する支援・チームアプローチである
・患者さんのQOLを高める
・終末期だけでなく病気の早期からさまざまな治療法と組み合わせて適応できる
・適応はがんだけではない
1989年、昭和天皇がすい臓がんで苦しまれたことをきっかけに、緩和ケアの研究、導入は加速度的に進んだそうです。『終末期医療に関するケアのあり方検討会』が発足し、緩和ケアも保険適応になったのだそうです。
それとは別に、医学部の学生さんの気になるお話も。
・今の医学部6年生は学校生活の4年間がコロナの期間だったため人づきあいが苦手な人が多いのだそう。その方たちが卒業し、医療の現場に出て行ったら…。(患者さんの顔を一切見ずにモニターとにらめっこしながら3分診療をする先生はすでにいますが)
・孤独は健康悪化要因のいちばん大きなファクター。高齢者の幸福度は関係性に帰属する。
・医療現場にいると無力感にさいなまれることもある。無力感と付き合う秘訣は恐れないこと、逃げないこと。患者さんを見捨てないこと。
ありがたいことです。
ACP(アドバンスケアプランニング)/ 森雅紀先生
森先生は聖隷三方原病院の緩和ケアの医師。大学の先生でもあります。
https://www.seirei.or.jp/mikatahara/section/palliative-support_2023/detail/index.html
・ACPとは医療ケアチームの支援を受けながら、今後の治療や生き方、患者本人が大切にしたいことなどについて患者が家族と話し、事前指示書を作る。
・病気のどのステージからでも始められる。
ACPのよい面とそうではない面についても聴かせて下さいました。
・日本では、以心伝心、察してほしい、和、家族の情、縁起でもないという考え方があって、患者のこれからや死について話しやすい状況ではないこと、ACPは短期的(余命わずかな患者さんということ?)には〇、長期的には△とのことでした。
・ACPを取り入れた患者さん本人は「聞いてもらえた」「辛さをとってもらえた」という満足感がある。
・患者さんと向き合ってニーズを拾うことで満足を感じてもらえるのですが、そのためには医療側と患者さんの信頼関係、医療者の態度は大事。
なので普段から、
・今ここを大切に(他人の喜び、苦しみに目を向ける)
・自分や仲間を大切に(それぞれの心や体に目を向ける)
・『白鳥蘆花に入る』例え名が出ずとも研鑽を積み、善行を行うこと。(治療的自我ってこういうことなのかな?)
最後に「命の終わりについて医者もいろいろと考えている」というお話もあり、こういうお医者さんや学者さんが増えていったらいいのになと思ったりしました。
緩和ケアにおけるヨーガ療法の可能性 / 森先生&木村先生
森先生は現役のホスピスの先生なので、現場でのお話をしてくださいました。
・40~50代で病気で亡くなっていく人と、認知症になってから亡くなる人どちらが幸せなのか。また、お父さんが旅立とうとしていることを理解できない小さなこどもさんのことなどお話されていました。
・人が亡くなることについて。ちゃんと亡くなるには、みんなが納得した亡くなり方じゃないといけない。患者自身は最期を覚悟できているのに、家族がそれを認めず、旅立たせてもらえないというケースも。
・生きざまが死にざま。人生を振り返ることができている人はいい死に方。いい思い出を想いながら死ねたらいいなというお話では、満州を経験している高齢者たち(大きなお屋敷に住み、お手伝いさんがいたんだそうです)の多くは、そういう思い出を持っている人が結構な割合でいるそうです。
・ホスピスにいるのはだいたい1ヶ月。その期間に心を開いて、自分の人生を他人に語れる人もいるし、在宅の方が語れる人も。その場合、医療者が間に入るとスムーズになることも。
・質疑応答の時間に、現役の医療者から痛みや倦怠感のコントロールについて質問がありました。森先生はお薬を少量使うこともあるという返答をし、木村先生はジョン・カバット・ジンの研究について話し、呼吸法、歩行瞑想、ボディスキャンなどメタ認知で客観視することで痛みを和らげることができるという事例を挙げていました。
ユニバーサル・ホスピスマインド / 小澤竹俊先生
在宅クリニックの医師、看取り医です。NHKの「プロフェッショナル仕事の流儀」に出演された先生。
何かに困っている人が最後、笑顔になれたらと思って医療活動をされているそうです。
・人はわかってくれる人がいると嬉しい生き物。伝えたいことをキャッチし、それを反復して相手に返す、語尾は「ね」にする、返す時には一呼吸置く、などのテクニックを話していました。
・苦しみから学ぶことについて。『当たり前』の大切さを知らない→苦しみ→大事なことに気付く→穏やか。
・講演中にワークも入れ「今までの人生、苦しかった時に支えになったもの(頑張れた理由)は何ですか?」という質問を会場に投げかけていました。普通の人はハッと気付きを得られ、感心するのかもしれませんが、この会場にいる人たちは、もっとヘビーなお題に日常的に取り組んでいる、ある意味ツワモノばかり。たぶん周りのヨガの人たちも同じことを心の中で思っていたはず(笑)
講演の最後にはちょっと(ちょっとじゃなかったな)ご自分の活動の宣伝をされていました。
・生きているということは誰かに知ってもらっていて覚えてもらうこと。覚えてもらうには、ほんの少し誰かの人生を変えてあげればいい
・誰かの支えになろうとする人こそ一番支えを必要としている
・役に立てない、力になれない時は苦しい。本当の力とは『逃げないこと』。苦しむ人と誠実に向き合うこと。
逃げないことは木澤先生も同じことをおっしゃっていて、命の現場にいらっしゃるからこそのお言葉なのだろうなと思いました。
BGMとか動画とかいろんなものを詰め込み過ぎて、ものすごく取っ散らかってしまって気の毒でした(^_^;) 持ち時間1時間だと短かったのかも。
尊厳とケア / ハーヴェイ・M・チョチノフ先生
緩和ケア界の第一人者による講演です(事前収録、字幕付き)。
「コロナの最大の犠牲者は人間の尊厳」であるというお話から始まりました。
緩和ケアの提唱者 シシリー・ソンダース先生の言葉も紹介してくださいました。「あなたが死ぬまで生きられるように全力を尽くす」。なんとすごい言葉なのだと思いました。
死を望む人の70%はうつ病であるということも。オランダでは尊厳死が認められています。どうして尊厳死(安楽死)を見つけ、それを選択したのかの研究も。調査対象はすでに亡くなっているのでそこに関わった医療者の聴き取りから完成した研究です。
痛みという体の苦痛から尊厳死を選んだ人は全体の49%。いちばん多かったのが『尊厳の喪失』57%(おそらく複数回答可なのだと思います)。病気になり、かつての自分じゃなくなったと感じると、人は人生を続ける価値がなくなったと思うのだそうです。
『インテンシブ・ケアリング』。自己感覚や尊厳を失った患者さんがそれらを取り戻すこと。誰も気にしてくれない時、苦しみは耐えがたいものになる。
「あなたについて何を知っておくべきですか?」「何を知ってほしいですか?」「人としてあなたはどういう人なのですか?」などの質問を10~15分間かけて聴く。
それを文字化して患者さんに読んでもらい、違うところは指摘してもらう。その後「完成したこれをカルテに載せてもいいでしょうか?」と医療者は尋ねる。多くの患者さんはOKと言うのだそうです。
インテンシブ・ケアリングは患者さん自身の人生を振り返る機会になります。人生への感謝が生まれる。尊厳を取り戻すだけでなく、家族と会う、話すチャンスになり、言葉を残し伝え、分かち合うこともできます。患者さんは尊厳と人格を肯定してほしいと思っているのでマッチします。
医療者側の態度として、患者さんの持つ重要性を肯定するまなざしと、患者さん自身を認めることをしないと、話そうとしている患者さんは苦しいのだそう。
先生方のディスカッションの時に木澤先生から最後「それだけの功績を残しているのに、極寒のマニトバ大学で研究を続けているのはなぜですか?(=もっと有名な大学でお勤めできるでしょう?)」と質問がありました。
それに対してチョチノフ先生は「5代前の先祖もこの場所に住んでいました。私もあちこち行きましたが今はここにいます。孫も生まれました。確かに寒さはありますが、車もあるし、快適な家もある。なにより病院がたくさんあり、そこを使っての研究がスムーズにできること。だからここにいます。」と返答されていました。
人生において何を大事にしているかの違いが如実に表れていて、こういう人だから素晴らしい功績を残せるのかもしれないなぁと思いました。
患者さんの尊厳をものすごく大事にしつつ、受け答えを聞いていると、時々チャーミングな面もある素敵な先生でした(^_^)
アジアにおける緩和ケアの現状と未来
モンゴル、韓国、中国での緩和ケアの歴史と今について、それぞれの3人の先生がお話になりました。英語、韓国語、中国語。同時通訳なし(^_^;)
質疑応答ありましたが、森雅紀先生とお師匠さんの英語力がすごいなぁと感心しながらぼーっとしていました(笑) これは動画配信(字幕付き)を待つのがいいと思います。目新しいことはなく、日本がたどってきた道をちょっとだけ遅れて歩いているのだろうという内容でした。
各先生の講演を拝聴して知ったことは、緩和ケアに携わる医療者は、患者さんは患者さんだけど、それ以前に一人の人間として尊重し、尊厳を大事にしていること。そして対話のために医療者としての態度をきちんとして患者さんと向き合うこと。向き合って対話するために、患者さん自身を肯定し、聴くスキルも身に付けていること。
緩和ケアに関わる医療者もすごいし、ヨガで入っている先輩方も相当努力されているのだろうなと思いました。
いいお天気(^_^)
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配布されたクリアファイル。色づかいが好き。
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私は身内をがんで亡くしています。亡くなった場所がホスピスでした。患者だけでなく家族にもそっと寄り添ってくれる。旅立った時に看護師さんたちが泣いていたのを憶えています。ホスピスでのケアは本当にありがたく、素晴らしい人たちと素晴らしい場所でした。
今回の学会のテーマがホスピスと聞き、参加するか直前まで迷っていました。
森一郎先生の講演の中で、50代の引きこもりがちな男性ががんになり、ディグニティ・セラピーを受けて母親に残した手紙のお話で静かに泣きました。それ以外でも泣くこと数回。ダメだなぁ…。
でも、この場で学べてよかった。
過去の記憶に紐づいてしまって悲しい気持ちになることもあったけど、これから生きていく私に役立つことがたくさんありました。
参加者の中には医療側の方も。その方々の目にはヨガはどう映ったのかなぁ。私はヨガ側なので向こう側にいらっしゃる人たちの本当の感想が聴けたらと思ったりしました。森一郎先生はヨガと医療の橋渡しをしてくれようとしているのがわかりました(共通言語というやつですね)。
以前は学会の会場でたくさん見掛けていた同期も、奈良の仲間も少なくなりました。
コロナがあったことも関係しているのか、今回の学会の論文は40本に満たない数でした。私の時はポスター発表も200本くらいあったような。少し寂しい気持ちに。
オンラインでの学習で最近知り合いになった聡明で努力家の女性が舞台上でオーラル発表。やっぱりすごい人だったんだなぁと思ったり(^_^)
企業ヨガのポスター展示のところに行ったら、たまたま私のことをうわさ話的に話しているのが耳に入ってきたので、脊髄反射的に「そのアホはわたしです(^_^;)」と自己紹介したり(笑)
オンラインの学びの場で仲良くなった遠方の先輩とごはんを食べにいったりも(^_^)
古いつながりが切れたり、新しい誰かとつながる。おもしろいなぁと思います。
会場の10階からの景色
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大阪開催ということで、大阪、兵庫の人たちを中心に(奈良の仲間も)運営にはたくさんの人が関わっていました。同期もいました。
2年前の立ち上げからずっと頑張ってきた人も。
裏方さんたちのお話を聴けたことで、実行委員会のみなさんが頑張ってくださったからこの日を迎えられたことを知りました。
おかげ様でとても快適に学会に参加できました。本当にありがたいことです。
携わってきたみなさんは走り続けてきっとお疲れでしょうから、ゆっくりできるなら休んでほしいなぁ。
次回は名古屋。同期の仲間や、企業ヨガの先輩(実は別のところでの恩人)が実行委員会になり準備されているようです。
名古屋学会のテーマは統合ヘルスケア。ヨガや様々な療法(漢方、鍼灸、アロマ、運動療法など)が医療の現場でどう取り入れられているのかを知ることができるようです。
名古屋大学医学部付属病院での実際をデモンストレーションとして見せて下さる予定だそうです。
総合診療科 - 診療科・部門 | 名古屋大学医学部附属病院
また元気に学会に参加できたら(^_^)
学会も終わり、この記事も書けたので、先送りしていたやらないといけないあれこれに取り組みます(^_^;)
買ったものあれこれ
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