NHKで放送された
漫画家イエナガの複雑社会を超定義
「流行のマインドフルネスを超速解説の巻」
初回放送日: 2022年5月13日
の文字起こしです。
会話劇みたいなのをそのまま起こしたので、わかりにくいところがあったらすみません(^_^;)
--- 文字起こし ここから ---
米国のエリートに流行 マインドフルネス
イエナガ:
マインドフルネスとは、仏教の瞑想法などをベースにしたメンタルトレーニング。アメリカのビジネスシーンではGoogleやAppleといったIT企業大手が火付け役となり、名だたるグローバル企業(Linkedin、Microsoft、Ford、Salesforce、SAP、Intelなど)が次々に導入。『ここぞ!』という時に高いパフォーマンスを発揮できたり、人間関係の改善などが期待できると言われていて、今やマインドフルネスは、ウォール街やシリコンバレーのエリートたちにとって、成功への架け橋。
とは言っても「ちょっと怪しいスピリチュアル系じゃないの?」という人もいますよね。
でも。科学的にマインドフルネスの効果って証明されているんです。
・ストレス軽減
・集中力アップ
・創造性の開発
・免疫力アップ
・不安の減少
などなど、論文の数もうなぎ上りに増加中。
今ではビジネスの世界だけでなくいろんな場面(アメリカでは刑務所でも)で活用されていて、驚いちゃうのは昨年、日本の7つの小学校でもアニメなどを見ながら行うマインドフルネス・プログラムを導入したっていう話。
とにかく今、熱烈な支持を受けているマインドフルネスなんです。
編集者:
でも瞑想って修行僧たちが山にこもって行うイメージじゃない?それが今、オフィスでビジネスマンたちがやるっていう、その点と点がどうもねぇ…。
イエナガ:
それ、結びましょう!どうして宗教的行いが、アメリカのビジネスシーンに広まったのか。もうちょっと時間下さい。
治療法からはじまったマインドフルネス
もちろん、このマインドフルネスにも先駆者と呼ばれる人がいて、それがアメリカ人の ジョン・カバットジン。この人がブームのきっかけを作ったんだ。
彼は56年前(1966年)、22歳のころに瞑想に出会った。当時のアメリカってヒッピー文化が若者の間に広まっていて、瞑想もちょっとしたブームになっていたんだ。で、実際に瞑想してみたら、不思議とストレスが減ってその魅力にはまっていったんだ。
それから10年余り経って(1979年)、カバットジンはマサチューセッツ大学内に心療クリニックを設立。訪れるのはうつや心の病、ケガなどによる慢性的な痛みを抱えた患者さんたち。彼らに瞑想を用いた治療を施そうとしたんだ。でも当時、瞑想は世間では市民権を得ていなかった。だから患者さんたちから「瞑想?何言ってんの?」と一蹴されるかもという不安がよぎった。確かにそうだよね。下手したら「ヤバい先生がいる!」と陰口を言われかねない。だからカバットジンは「怪しい」とか「とっつきにくい」という抵抗感を持たれないように工夫したんだ。
例えば、カバットジンは仏教のしきたりや専門用語などには触れずにシンプルに「呼吸に意識を向ける」といったテクニックだけを患者さんたちに教えたんだ。さらに瞑想というと、座禅のイメージが強いけど、カバットジンの瞑想法は、ヨガしたり、歩いたり、仰向けになったりいろいろなやり方を用意。それらのトレーニングをまとめたものをカバットジンは【マインドフルネスストレス低減法】と銘打った。
そもそもマインドフルネスって仏教の世界で【サティ】という【気づき】を意味する言葉が語源。この【気づき】っていうのをカバットジンは大事だと捉えて『今この瞬間に意識を向けて心の状態に【気づく】』ことをトレーニングの肝にしたんだ。
そして肝心の結果はというと、患者たちがカバットジンの8週間のプログラムを実践したところ、表情に笑顔が戻ったり、活動的になったり、肉体的症状が和らいだ。
1990年代以降には実証研究が進み、さまざまな疾病の改善やストレスなどへの効果が認められていったんだ。さらにTVなどでも取り上げられるようになって、カバットジンのトレーニングは、医療の現場で広く知られるようになった。これが今のマインドフルネスブームの原点なんだ。
心の状態に気づく日常トレーニング
1分間トライ!座る瞑想
それでは座る瞑想をしてみましょう。骨盤を立てて背筋を伸ばします。
初めは自分の吸う呼吸と吐く呼吸に意識を向けていきます。鼻先の空気の出入りや胸やおなかがふくらんだりへこんだりする感覚を感じ取ります。自然に吸って、自然に吐くだけです。
そして考え事や雑念が出てきたら、そこに気付いて、そして自分の意識を呼吸に戻していきます。
それを繰り返し行っていきます。
イエナガ:
どうだった?お次はある食べ物を使って行うんだけど、みんなも家にあるよね?干しブドウ。これを使いまーす。(ピーナツとかでもOK)
食べる瞑想
食べる瞑想です。一緒に行いましょう。
まずこれ(干しブドウ)をよく見ていきます。見るということを通して、これを新鮮に受け止めていきます。どんな色でしょうか、どんな形でしょうか。興味を向けてよく見てみます。
そしてよく見たら、今度は触っていきます。触った感触はどうでしょうか。柔らかかったり、硬かったりするかもしれません。
次はよくにおいを嗅いでいきます。どんな香りがあるでしょうか。
よくにおいを嗅げたら今度は、これを味わっていきます。ゆっくりと口の中に入れて。初めは舌で転がすようにして舌触りを感じ取っていきます。今度はゆっくりと噛んでいって、噛んだ時にどういう味わいがあるか、そこにどういう発見があるか、興味を向けていきます。一噛み一噛みゆっくりと丁寧に。そしてその瞬間瞬間にどういう体験があるかを感じ取ります。最後はごくっと飲み込んでいきます。飲み込んでいくときにその一粒がどういう感じで自分の体の中に入ってくるのか、感じ取っていきます。
そして食べ終えた後の自分の体の感覚を感じ取ります。
これで食べる瞑想を終わります。
イエナガ:
おもしろいよねー。でもこれ、人がたくさんいるところでいきなりやるとドン引きされるかもしれないから気を付けてねー。
ストレス低減&ひらめきに効果!?
2000年代になるとマインドフルネスが脳の機能などに変化を与えることがわかってきた。例えば、一定期間、マインドフルネスのトレーニングを受けると、脳の中の【偏桃体】と呼ばれる不安を生み出す脳の部位の、過剰な活動を抑えられちゃう、さらに、マインドフルネスのトレーニングをすると、ストレスが減ったり、ひらめきやすくなると言われているんだ。
ビジネス界に広めた男の思い&秘話
2007年、マインドフルネスはビジネスシーンでブームになっていく。舞台はアメリカのシリコンバレー。ブームの仕掛け人は チャディー・メン・タン(当時のGoogleトップエンジニア)。彼がマインドフルネスをビジネスシーンに持ち込んで大ヒットさせたんだ。きっかけは同僚たち。彼らは高い目標を掲げて、日々、困難な問題に直面して疲弊していた。そんな状況を見たメンに、あるアイディアが浮かんだ。それはマインドフルネスで彼らを救うことだった。仏教徒だったメンはマインドフルネスの効果をすでに実感していたんだ。そこでカバットジンのトレーニングを導入してみたの。でも、これうまくいかなかったんだよね。なんでかわかる?実は当時、社員たちには「ストレスがあるのは忙しい証拠、名誉なことなんだ」という意識が染みついていたんだ。だからメンタルケアには興味がなかった。
そこでメンは彼らが興味を持つように工夫したマインドフルネスプログラムを作ることにしたの。その時重要なポイントとして持ち出したのが【EQ】。このEQ(感情知性)、簡単に言うと、自分や他人の感情を見極めて調整する能力のこと。アメリカではEQが高い人ほど仕事で成功できると言われていて、関連書籍がベストセラーになるほど注目されていたんだ。メンはEQの専門家などにアドバイザーになってもらいながら、マインドフルネスを使ったEQ向上プログラムを開発、社内でアピールしていったわけ。
やり方も『ひと呼吸からでもOK。それを積み重ねて習慣にしていけばいい。』と提案するなど、多忙な社員たちが億劫に感じないように工夫。すると参加者が急増。前より少ない仕事量で業績がアップしたり、顧客からの信頼をゲットした、などの報告が相次いで、大人気講座になったわけ。その噂を聞きつけた他の企業もこぞってメンのプログラムを導入。
そして2014年、TIME誌が『マインドフル革命』というタイトルで大特集。社会全体を巻き込むムーブメントになっていったんだ。
スポーツ&教育 広がるマインドフルネス
さらにマインドフルネスは裾野がどんどん広がっていて、例えばスポーツ。アメリカではNBAやNFL、NLB、テニス、ボートなど多くのスポーツ選手がマインドフルネスを取り入れている。
さらに教育界。日本では一部の学校でマインドフルネスプログラムが取り入れられたり、子どもたちが家で実践できる絵本が発売されたりもしている。アプリもマインドフルネスに特化したものが続々登場。
マインドフルネスの流行 気を付けるべきこと
すごく盛り上がっているマインドフルネスだけど、日本マインドフルネス学会の越川房子理事長はこう警鐘を鳴らしている。
”実証データの結果だけを安易に切り取り、あたかも簡単に効果が出るかのように報道されることがあるが、精神的症状の軽減や、創造性・共感性の向上などには継続的な実践が必要である。どのような指導者のもとで、どれだけの時間と回数を実践しての効果なのかを伝えず、結果だけが誇大評価されていることに危惧を覚える。ブームに乗っかって『マインドフルネスという言葉を入れれば売れる』といった商品も出てきている。”
と指摘しているんだ。
”心の状態に気づく” マインドフルネス
仏教の修行法から始まり、医療の現場やビジネスシーンまで取り込まれながら広まったマインドフルネス。
WHOは2030年に【うつ病】が疾病負荷の第一位になると予測していて、社会のルールや常識が変わり続けるこの複雑社会の中で、心の平穏こそが求められているのかもしれないね。
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マインドフルネスは、目指す場所別(?)で大きく2つに分派しているような気がします…。
私はジョン・カバットジンのマインドフルネスの実践を続けています。
この番組内で【座る瞑想】と【食べる瞑想】を指導した先生、実は、GWに参加した5日間のサイレントリトリートの先生なのです。なので録画していた(笑)
5日間のサイレント リトリートに参加していました(オンライン) - 今日もよい日
番組は、マインドフルネスの歴史、継続することでどのような変化が報告されているか、問題点に至るまで、とてもわかりやすくまとめられていて、ありがたいなあと思いました(^_^)
私も淡々と続けていきたいと思います。
リクエストあったので録画から文字起こししました