今日もよい日

ストレスのお薬としてのヨガ。お医者さんたちも、ヨガと瞑想に注目しています。

『廓文章 吉田屋』⇒ 仁左衛門さんの『カワイイ』を堪能する演目でした(〃'▽'〃)/シネマ歌舞伎

 

 

ちょうど1年くらい前に『観に行く予報』も付け加えて記事にした、2019年の『シネマ歌舞伎』。

 

ほぼ同じ時期になったのに、2020年のラインナップの発表がまだないのが気になります(^_^;)

 

2020年は遅めの 2/7(金)発表で、とりあえず 4月は『京鹿子娘二人道成寺』なのだそうです。

 

  

 

2019年は全然行けませんでした(^_^;)

 

2019年に観に行けたのは、4月の『桜の森の満開の下』、11月の『女殺油地獄』の2本のみ(^_^;)

 

ムビチケを何セットも買い込んでおかなくてよかったです(^_^;)

 

 

 

解説つき上映会で観ました(^_^)/

 

『廓文章 吉田屋(くるわぶんしょう よしだや)』は、ちょうど1年前に歌舞伎座で観ました(^_^)

 

その時は染五郎(現 幸四郎)さんと七之助さんという組み合わせで、初めて『じゃらじゃら』がどんな意味なのかわかった(イヤホンガイドで知りました(笑))演目です(笑)

 

 

 

今回のシネマ歌舞伎の『吉田屋』は、仁左衛門さんと玉三郎さん。

 

解説つき上映の日に観に行くことができました。

 

解説はおなじみ亀岡典子さん

 

今、本屋さんに並んでいる、演劇界2月号の座談会にも登場されているくらい歌舞伎に造詣の深い有名なお方です。

 

 

以下、亀岡さんからの解説です。

(メモ書きなのでところどころ補完しつつ(^_^;))

 

 

『廓文章 吉田屋』は上方歌舞伎の名作です。大坂の歴史の面白さが楽しめます。

物語の登場人物である『夕霧』は実在の人です。新町にある遊郭太夫(最上級の遊女)として絶大な人気がありました。しかし、22~23歳で亡くなります。今でいうアイドルみたいな人だったので、亡くなった時は大阪中が泣いたと言われています。

遊郭のある新町は今でいうオリックス劇場あたりと言われています。戦前まではまだ面影がありました。江戸の吉原、京都の島原と並んで、日本3大遊郭。新町に遊郭ができた当初、遊女屋は70軒くらいでしたが、その後一番多い時で240軒ほどにまで増えたのだそうです。ですから遊女・芸妓はたくさんいました。太夫はそのTOPに君臨します。太夫の下に『天神』『鹿子位(かこい)』『端女郎(はしじょろう)』と続きます。1000人の遊女のうち太夫と呼ばれるのは27人。

実在した『夕霧』は美貌だけでなく客あしらいや教養、そして品性も兼ね備えていたそうです。『夕霧』が亡くなったことは、のちに浄瑠璃や歌舞伎の作品として残され、今に至ります。

さて、このお話では、伊左衛門という人が出てきます。大店の若旦那さんなのですが、夕霧に入れ込み過ぎたこともあり勘当され、貧しい暮らしです。伊左衛門は『紙衣(かみこ)』という、和紙でできた粗末な着物を着て登場します。

(吉田屋のポスターを見て)これ、舞台映えのために綺麗な着物ですが(笑) でも本当は和紙、それも夕霧から届いた恋文をつぎはぎしての紙衣です。着物に金の糸や銀の糸で刺しゅうされている文字には、夕霧からの愛しい想いが綴られています。

この演目は2010年の歌舞伎座さよなら公演で上演されたものです。今から10年前ですから、伊左衛門を演じる仁左衛門さんは60代半ば。今もですが、すらっとしていてとても素敵です。

仁左衛門さんはもともと京都の出ですが、20代で東京に移り住んでいます。インタビューなどさせてもらいますが、未だに関西弁でお話になられます。

夕霧を演じた玉三郎さんにロングインタビューさせていただく機会がありました。「女方をつくる作業は、一生を捧げても足りない」とおっしゃっています。

2人は若いころからコンビを組んでいて『孝・玉コンビ』(仁左衛門さんは当時、本名の孝夫で活動)と呼ばれていました。美しさはもちろんですが、2人とも背が高くてすらっとしていました。当時の歌舞伎俳優と言えば、言い方は悪いですが、顔デカ、足が短い人ばかりでした(笑)

それに比べて2人は顔もとても小さかったのです。

玉三郎さんは背が170cmを超えていて女方としてはとても大きく、苦労されました。当時の俳優は小さい人が多いですから、立役よりも大きくなってしまうのです。身体を折って、それでも美しく見せようとすることに苦心しました。美しく見せるために日本画や浮世絵をよく見ていたのだそうです。でも、それらの絵の中の女性はみな8頭身。『江戸時代の女性を演じる上で、小さく見せなくてもいいのかも』と思ったのだそうです。衣装の工夫、身体の線を背景の中で美しく見せる工夫など、苦労されました。

『孝・玉コンビ』が世に出たのは昭和40年代。ちょうど日本も新しい時代に入った頃です。2人の姿に現代的なものを感じ、その時代の感性に訴えるさわやかな風として歌舞伎を観ない人たちにも人気を博しました。

仁左衛門さんは言っています。「彼(玉三郎さん)とは”あうん”でできるんだ。芝居の作り方などで喧嘩もした。でも目指すものは一緒だったから。」「今でも2人でやりたいものがあるんだけどなぁ(笑)」

歌舞伎は、江戸の荒事(力強さのあるお芝居)、大坂の和事(柔らかみ、おかしみのある人情芝居)と大きく2つに分かれます。和事は、初代坂田藤十郎がはんなり、やわらかな芝居をしたことが始まり。和事には封印切の忠兵衛、心中天網島の治兵衛などもありますが、吉田屋の伊左衛門が和事の頂点の役とも言われています。

吉田屋の伊左衛門が難しい理由のひとつに、『ドラマがないから』というのがあります。人が死んだり、ドラマティックな出来事がないままで、恋人同士のやりとりの場面しかありません。雰囲気(ムード)、においで役を作るので、難しいとされています。仁左衛門さんも「初役の時には逃げたくなるくらい難しかった」と述懐しています。マネージャー代わりの番頭さんも、舞台を見て「ああっ…(これはダメだ)」という顔をしていたくらい、上手くできなかったのだそうです。しかしその後十何回も上演を重ねていき、極めていきました。

伊左衛門をしている仁左衛門さんには胸がキュンとします(笑) 実際に歌舞伎座で観たときも観客席から「わぁ、かわいい」という声も聞こえてきました。

仁左衛門さんは松島屋です。松島屋の吉田屋のやり方は、花道に登場する場面で『差し出し』といって、ろうそくの明かりで登場するのが特徴です。華やかでにぎやかで眼福の舞台をどうぞお楽しみください。

 

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持ち時間20分きっかりでお話をまとめるのは本当にプロ!!

 

私もそうなれたらいいのに(^_^;)

 

 

 

お話の後は、休憩なしでいよいよ上映。97分間の演目です。

 

仁左衛門さんのインタビューから始まります。

 

亀岡さんがお話になった内容もインタビュー映像の中にときどき、出てきます。

 

 

面白くて記憶に残っているのは、

 

仁左衛門さんが子役として舞台に立った時「ちゃーん!」と一言いうだけの役なのに緊張したこと、その時、花道から退場する時に、実のお父さんに背負われて退場していくのですが、お客さんたちが嬉しそうに拍手をしてくれたのが、背負われながらもとても嬉しく感じたこと。

 

子役時代に、舞台上のこたつで眠るという役をしたときに、本当に眠ってしまって、舞台が終わってから「ねてしもたわー(笑)」とお父さんに言ったら『バチーン!』とはたかれたこと。その時にプロ意識みたいなものの目覚めがあった、というお話。

 

 

玉三郎さんのインタビューで印象的だったのは、巡業か何かで仁左衛門さんと一緒に出演しているとき、楽屋で壁越しによく喧嘩をしていたというお話(^_^;)

 

もちろん喧嘩の内容は、お芝居のやり方などについてなのですが、あの美しい二人が薄い壁越しに怒鳴り合っていたと想像すると(笑)

 

 

玉三郎さんは

仁左衛門さんとはもう50年くらい一緒にさせていただいています。やりたくてやれるわけでもなく、やりたくないと言えるわけでもなく…もうご縁というのを超えた何かだと思います」

ともおっしゃっていました。

 

同じ時代の、同じ世代に生まれていなければ『孝・玉コンビ』は生まれていなかったということ。

 

…同じことが私にも言えます(笑)

 

中村屋兄弟を観ることができるこのタイミングで、歌舞伎に興味を持つことができてよかったなぁと思ったり(笑)

 

 

 

インタビュー映像はまあまあ長く作られていまして、その後に、いよいよ肝心の舞台の始まりです。

 

 

ダイジェスト版、こちらでご覧ください

廓文章 吉田屋 | 作品一覧 | シネマ歌舞伎 | 松竹

 

 

一言でいうと、仁左衛門さんが本当にかわいらしくて(〃'▽'〃)

 

映画館の客席は満席だったのですが、あちこちで「わぁ…」とか「かわいいわぁ…」など、小さな声が上がっていました。

 

『60代半ばの男性に「かわいい」なんて、なかなか感じることないよね(笑)』と思いました。

 

笑いもたくさんありました。

 

染五郎さん/七之助さんの時の吉田屋では、こたつの布団を引っ張り合ったり、伊左衛門がこたつの上から転落したりというのがあり笑ったのですが、仁左衛門さん/玉三郎さんの吉田屋では、そんなに派手でわかりやすい笑いはなく。

 

でも、笑える場面がたくさんあったのです。

 

これは亀岡さんが解説なさっていた「雰囲気(ムード)、においで芝居を作る」ってことなのかなと。

 

二人のじゃらじゃらに にんまりしつつ幸せな気持ちになっているところに、控えめに仕掛けれた笑える仕草やお芝居に、ついくすっと笑ってしまう。

 

長年演じ続けて、ずっと工夫を重ねてきた、円熟のお芝居なのでしょう。

 

 

玉三郎さんの動きはあまりなく、仁左衛門さんはよく動いていました(笑)

 

片岡三兄弟の共演、20歳そこそこの巳之助さんを観ることもできました。

 

 

『これ、観に来てよかったなぁ…』と、ほのぼのした気持ちで席を立つことができました。

 

シネマ歌舞伎『廓文章 吉田屋』は 1/23(金)までの上映です。

 

『解説付き上映』じゃない日でも、上映15分前にはほぼ満席(^_^;)

早めに席を抑えておいた方がいいと思います。

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この回、残りは最前列の右端の白いところ、一席のみ!(^_^;)