とうとう今年、これを買ってしまいました(笑)
奈良の西ノ京エリアの4つのお寺(薬師寺、唐招提寺、喜光寺、いつもお邪魔している西大寺(笑))を周遊できる拝観券です。
7年くらい前に企画が始まったときは、薬師寺、唐招提寺、喜光寺の3つのお寺が参加していたのですが、昨年から西大寺も仲間入り(^_^)
昨年もあったこの拝観券、昨年は様子見していましたが、今年は『拝観券購入者限定のイベント』があることを知り、そういうのが好きなので(笑)、思い切って購入したのでした。
イベントは2部構成。
漢方をきちんと煎じる形で提供しているお医者さんの、生薬としての蓮のお話と、4つのお寺のお坊さんのお話、そして、5人でトークセッションという形です。
漢方医:桜井竜生先生のお話
桜井先生は面白い経歴をお持ちでした。
長生きをしたいと思ってお医者さん(外科医)になったのですが、実は医師は短命。発作などで死ぬ医師を何人も見てきたのだそうで(^_^;)
東洋医学の研究所がある北里大学でお勤めされたりして、今は東京で漢方医をされています。
いろいろなお話をしてくださったのですが、いちばん驚いたのが、
10数年後には効き目のある漢方は出せなくなるかも…
というお話でした。
中国がすでに何年も前から輸出規制を始めていて、その度に日本の東洋医学会も規制を緩めるようにお願いをしてきたそうです。
じゃあ『日本で作ったらいいじゃない(^_^)』と私はその時心の中で思っていたのですが、そんなの誰でも思いつくこと(笑)
すでに日本のメーカーが、生薬を植物工場(環境や土などを忠実に再現)みたいなところで作ろうとしたのだそうです。しかし失敗に終わりました。
中国のトウキやマオウは、効き目のある生薬としては作ることができなかったそう。
食べ物の考え方に身土不二(その土地と気候じゃないと味が出ない)というのがありますが、漢方薬の原材料となる生薬も、その土地で取れるからこそ効果が出るということです。
今は保険適用され、お医者さんも症状によっては出してくださる漢方薬(漢方製剤)ですが、政府は今後、保険の対象から外すことも検討しているとのことでした。
西洋のお薬や見立てではよくならない病気でも、漢方を用いたことで劇的によくなったという話はよく聞きますよね。
治療の選択肢の一つとして、漢方は残ってほしいなあと思いました。
先生の講演の本題は『蓮の効果』。
蓮は、花でも茎でも根でもなく、種が生薬として用いられます。
種の表面の黒い皮をむいて、中の白い部分が蓮肉(れんにく)という名前で使われるのだそうです。
蓮(蓮肉)の効能として挙げられていたのは、糖尿病や胃の働きをよくすること。
いろいろ大変だと思いますが、漢方薬がこの先も身近なものであってほしいなあと思いました。
講演の最後に先生は「病気がはっきりと表れる前の未病(なんとなくの不調)の段階で漢方を飲むとすごくいいです。」とおっしゃっていました。
それと「2008年以降に医学部を出た人は、コアカリキュラムとして和漢薬について学ぶことが義務付けられましたから、漢方の持つリスクを知っています。しかし、それ以前のお医者さんは(略(笑))」とも(^_^;)
他にも漢方に興味がある人が楽しめるお話(証のこと、神農さんのお話など)がいろいろありました。
漢方に興味ない人は…
頭が完全に下向きになって、寝てました(笑)
拝観券を買った人(=蓮とかお寺が好きという人)以外に、シニア大学の聴講生の方も、今回のイベントには参加できたようです。
休憩時間
休憩時間には、蓮のお茶の試飲が用意されていました(^_^)
自分でポットから紙コップに注ぎます。
「独特の味なので、ちょっとにしておいた方が(^_^;)」と喜光寺のお坊さんが言ったので、臆病者の私はこれくらいに(笑)
ほんの少し(笑)
独特な味は全くなく飲みやすいお茶でした(笑)
この蓮のお茶、一般でも販売されているのだそうです。
このお茶は蓮肉ではなくて、蓮の葉っぱ100%でできています。
蓮肉は入っていませんでした(笑)
ほぼ麦茶で飲みやすかったです(^_^)
4つのお寺のお坊さんたち
今回のコラボは唐招提寺のお坊さんと、先ほどの桜井先生が、伏見小学校(西大寺駅からも歩いて行けます)の同級生だったというご縁がきっかけだったそう。
4つのお寺のお坊さんそれぞれが担当を決めて、蓮にまつわるお話をしてくださいました。
蓮の歴史(西大寺のお坊さん)
蓮の年表を用意してくださいました。
でもこれ、字が細かすぎて、年齢高めの参加者には読めないだろうと思いました(笑)
仏教の教えの中に『蓮の五徳』というものがあるそうで。
1 淤泥不染(おでいふぜん)…泥より華を出すが、蓮の華じゃ泥の染まらずに浄らかに咲く
2 一茎一花(いっけいいっか)…一つの茎に一つの華をつける
3 花果同時(かかどうじ)…花が散って実をつけるのと違い、華と実が同時につく
4 一花多果(いっかたか)…一つの花から多くの種がとれる
5 中虚外直(ちゅうこげちょく)…中は空洞だけど、まっすぐに立つ
資料にはもう一つ付け足しがあり、
6 種子不失(しゅしふしつ)…蓮の種は腐らず、年月が経っても条件が合えば芽を出す
なので『蓮の六徳』です(^_^)
ヨガをしている人の中には、このうちのどれかをご存知の方も多いと思います。
ヨガのモチーフとしてもよく用いられる蓮ですが、仏教で『こうありたい』という姿を、蓮に見ていることからきているのです(^_^)
西大寺のお坊さんは、 午前中、歯医者にいて、神経を抜いたとは思えない口調のなめらかさとおもしろさでした(笑)
蓮の美術(薬師寺のお坊さん)
蓮は仏教には欠かせないお花とお話されていました。
薬師寺にある日光と月光さんは、お座りになっている台座が蓮の花であるというお話、また、屋根の先端にも蓮の花があしらわれていたり、三重塔の先にある水煙の飾りにも蓮があったりと、薬師寺には蓮をかたどったもの(美術)がたくさんあるのだそうです。
蓮の種類(唐招提寺のお坊さん)
754年に鑑真が唐招提寺に来た時に、レンコンを持ってきていたのだそうで、お坊さんが漢方医の桜井先生に「これ、漢方として持ってきたんでしょうかね?」とお聞きになっていました。
なので、唐招提寺も蓮とは縁の深いお寺。
蓮の種類について、写真を用意して説明してくださいました。
蓮は世界中のあちこちにあったそうで(西大寺さんの年表にもある)、日本にあるのは中国から伝わったものがほとんどということでした。
最近では年に3~4種、新種の蓮が生まれているそうで、中国とアメリカのハイブリットな蓮もたくさんあるのだそうです。
花弁が八重になっているものはアメリカ系のものだとか。
そう言われてみると、蓮の花には、花弁がシンプルなものや、八重桜のように幾重にも花弁が重なっているものもあるなあと思い出します。
それと、アメリカ系の蓮は黄色いものがあるのに対して、アジアの蓮は赤系が多いというお話も聞かせてくださいました。
とてもお話のお上手なお坊さんでした。
蓮の写真(喜光寺のお坊さん)
写真についてのお話の前に、おもしろいお話がありました。
喜光寺は蓮でとても有名なお寺ですが、中国から来た参拝客の中には、種を取って皮をむいて食べちゃう人が結構いるのだそう(^_^;)
食用の蓮ではないのでおいしくないのか、その場でその種をペッと捨てていくのが悩みなのだとか。
この喜光寺のお坊さんは食べることも大好きのようで「私も種を食べたことがある」というお話をなさっていました。
それに対して漢方医の桜井先生が「寄生虫がいますよ(^_^;)」とさりげなく食べるのはやめた方がいいことを伝えて、場内のみんなは笑っていました。
象鼻杯についてもおもしろいお話が。
蓮のまっすぐな茎の中心は空洞の管なので、葉の中心にお酒を流し込んだり、ジュースを入れたりして吸いながら飲むことができます(^_^)
これを『象鼻杯(ぞうびはい)』というのですが「今朝もジンジャーエールでしてきました(^_^)/」とおっしゃっていました。
(私もいつか経験してみたいのです。奈良だと大安寺で毎年、象鼻杯をしているとNHKのニュースでみたような…)
葉っぱと茎の接続しているところに、ちょっとだけ爪楊枝で穴を開けるのが、飲みやすくするコツなんだとか。
参加者がたくさんいると、回し飲みをすることになるのですが、口をつけたところはハサミでカットするので、衛生的にも大丈夫とのことでした。
ただ、蓮の茎を切ったときに出る白い汁はものすごく苦いのだとか(^_^;)
喜光寺のお坊さんは4つのお寺のお坊さんの中で最年少だそうで、フォトコンテスト向けの写真をいっぱい撮っているそうです。
「フォトコンテストにも参加してくださいねー」と言いながら、スライドショーで撮った写真を見せてくださいました。
拝観時間前のとても早い時間に撮った蓮や、蜂が蓮のすぐ近くで飛んでいる写真など、どれもとてもきれいだなあと思いました。
喜光寺さんはインスタグラムをされているそうなので、ご興味のある方は探してみてくださいね。
あ、そうそう、2~3日くらいすると、珍しいとされる双頭蓮が咲くかもしれない、というお話もありました。
一つの茎に一つの花しか咲かないのが蓮なのですが、ごくまれに、つぼみが2つつくことがあるのだそうです。
咲いたらきっとインスタグラムに載せてくれると思うので、楽しみに待っています(^_^)
※ 7/16 追記しました ※
双頭蓮開花しました‼️
— 高次喜勝@薬師寺&喜光寺 (@takatsugikishou) July 15, 2019
片方だけという不思議な現象www
長く楽しめるのでいいかなw
16日、17日は早朝開門延長します‼️
吉祥の蓮なので、支柱は水引で固定www#奈良 #喜光寺 #蓮の寺 #ロータスロード #行基 さん #蓮 #lotus #Japan #nara #kikohji #gyoki #双頭蓮 #そうとう珍しい#咲いた pic.twitter.com/U61o3OAgQi
片っぽだけでも無事に花が開いてよかったです(^_^)
トークセッション
4つのお坊さんがそれぞれ、担当のお話をなさった後は、トークセッションの時間。
唐招提寺のお坊さんは、夏にきれいな花を咲かせるために、3月のはじめあたりから準備をするというお話をされていました。
また、蓮は花自体が微妙な温度で発熱するそうで、その熱で花が開閉したり、虫が寄ってくるというお話、また、コガネムシが受粉のお手伝いをしてくれるので、止まりやすいように花弁が精いっぱい開いている、など、これまで知らなかった蓮のあれこれを教えていただきました。
4つのお寺のお坊さんの写真はこちらに。
このイベントは、薬師寺のまほろば館という綺麗な建物で行われました。
室内の一段高くなっているところには仏様の掛け軸があります。
イベントが始まるとき、仏様に向かって、般若心経と光明真言を5分くらい、4人のお坊さんが唱えました。
後から伺ったお話だと、宗旨宗派がそれぞれ違うので、微妙な上げ下げなど、同じお経でも違うところもあるのだそうです。
全然わかりませんでした(^_^;)
そんな違いを超えて、4つのお寺がなかよくイベントをするというのは、素晴らしいことだなあと思います。
・お経を聴く(=ありがたい音の波を浴びる)
・蓮の花が好き
・漢方にも興味がある
という私にとって、このイベントは最高でした(^_^)/
イベントの最後には、薬師寺のお坊さんが締めの言葉を。
急に振られた感じでしたが、さすが薬師寺さん、漢方の先生のお話や、他の3人のお坊さんがお話になっていた言葉をちりばめて、わかりやすい復習のような形で、でも短時間できっちり締めてくださいました。
これは見習いたいと思いました(笑)
お隣の建物に謎の天女を見たのですが、あれは?
写真は西大寺。先週に比べてたくさんの花が開いています(^_^)/