久し振りに歌舞伎座に行ってきました。
お正月の月らしく積み樽があり、これを背景として写真を撮っている人も(^_^)
大好きな中村屋さんは、お兄さんの勘九郎さんは歌舞伎はちょっとお休み中(大河ドラマのため)、『三人目のせがれ(by 勘三郎さん)』の鶴松さんは今月、中村屋兄弟からは離れて、浅草で若手の歌舞伎にチャレンジされています。
初役ばかりで4役とは大変そうですが、すごいこと(^_^)
七之助さんはいるけど、勘九郎さんはいないことだし、と、もともとは行くつもりはなかったのですが、元旦のNHKの歌舞伎中継を見て、つい行きたくなってしまったのでした(笑)
歌舞伎3年生の私が、昼の部のあれこれを書こうと思います。
舌出三番叟(しただしさんばそう)
舞踊の演目です。私は舞踊はさっぱりわからないので、イヤホンガイドを借りて解説を聞きながら観ました(^_^;)
芝翫さん(前 橋之助さん)が楽しそうに踊っていました。(解説聞いていても、これくらいしか書けません(笑))
吉例寿曽我(きちれいことぶきそが)
七之助さんが登場する曽我兄弟の物語です。
私が観たことのある曽我兄弟のお話は『兄 十郎/弟 五郎』が登場するのですが、今回のお話の兄弟の名前は『兄 一万/弟 箱王』という名前なのです。
イヤホンガイドを聞いていてやっとわかったのですが、十郎/五郎がもっと年若いときに、一万/箱王を名乗っていたということで、今回の名前なのだそうです。
歌舞伎に詳しい方は名前を聞いただけで『ああ、幼少のころの話なんだな』とわかると思うのですが、私は解説を聞いてやっと理解できました(笑)
箱根にやってきた曽我兄弟。仇討(あだうち)の相手が箱根詣でに来ていると知ってはるばるやってきたのです。
やっと親の仇を討てると思ったら、そこにいたのは工藤(お父さんを殺した人)の奥方。工藤本人は多忙のため、箱根詣でには来ていなかったのです。
がっかりする兄弟。
通常の(?)曽我兄弟のお話と同様に、『今回はまだその時ではないので』と通行手形(私が今抱えている大仕事を終えたら仇討ちに来なさいという意味)を渡して物語が終わります。
今回は奥方が夫の言いつけで通行手形を用意しておいた、という感じです。
兄弟が身分を隠して工藤一行の前に現れたときは、家々を回りおめでたい芸を見せお金をいただく人のふりをしています。ふりだけでなく乞われて、小さな馬の首形を持って踊ります。
筋書や配役を見ていて面白いなあと思ったのが、兄の役を七之助さん、弟の役を芝翫さんがすること。
実年齢から言えば逆(笑)
でも、曽我兄弟のお話は、弟はやんちゃで血気盛んな人として描かれているので、エレガントな佇まいの七之助さんにはちょっと合わず、やっぱり弟を諌める落ち着いた性格の兄の役が適任だと(笑)
七之助さんはきれいな水色の着物がすっきりとよく似合っていましたが、舞鶴(今回は児太郎さんが演じました)の役でも見てみたいなあと思ったりしました。
福助さんも病気から復帰2作目で、おめでたいことでした。
廓文章 吉田屋(くるわぶんしょう よしだや)
これも七之助さんが登場(^_^)
もう一人の主人公、幸四郎(前 染五郎)さんは なよなよとした大阪の豪商の家のボンボン(つっころばしというそうで)伊左衛門を演じています。
伊左衛門は、七之助さん演じる夕霧(遊女)に入れあげたあげく、借金が膨らみ、家からは勘当されます。
お金がないために師走の寒さの中、紙の着物を着ていて、お金もないのに、2年ぶりに夕霧のいるお店にやってきます。夕霧が病気だという噂を聞いて心配になったのです。
お店の旦那さんの計らいによって、中に通してもらえますが、夕霧が他のお客さんのところにいると知って、いじいじとしています。
不貞腐れて待ち焦がれて、やっと夕霧が自分の部屋に来てくれても、いじけているので、せっかく会えたのに意地悪な言葉やしぐさをして、夕霧を困らせます。
実は夕霧はこの時、伊左衛門に恋焦がれて、でもなかなか会いに来てくれなかったので病気になってしまっています。
遊女の豪華な身なりですが、おでこのところに紫色の鉢巻(病鉢巻=やまいはちまき)をしていることから、病気であることを表わしています。七之助さんのお顔に紫色はとても似合っています(^_^)
伊左衛門に意地悪をされた夕霧は『私はあなたのことを想って病気になってしまったのに』と喧嘩を始めます。こたつ布団を引っ張り合ったりして、子どもか!と思います(笑)
そんなときに突然知らせが届きます。
勘当が解かれ、夕霧を身請けするためのお金が運ばれ、二人は結婚することになり、めでたし、と話が終わります。
歌舞伎のお話は、展開が急すぎてついていけません(笑)
この吉田屋は、来年の1月に、新作としてシネマ歌舞伎に登場します。伊左衛門を仁左衛門さん、夕霧を玉三郎さんが演じます(^_^)/
主人公の伊左衛門のなよなよぶりは、私はちょっと苦手(笑)
だだっ子のような振る舞いなので、母性本能をくすぐられる人もいるかもしれません(笑)
こんな男と結婚するなんて夕霧もちょっとあれだね、と思うのですが、伊左衛門は大金持ちの家の子だからいいのかな(笑)
夕霧が勤めるお店の旦那さんの奥様役に秀太郎さん(仁左衛門さんのお兄さん、ラブリンの養父)が登場して、最後、二人の結婚が決まったことで、大阪締めの音頭を取ります。
秀太郎さんは上方歌舞伎の方で、この物語の舞台である吉田屋は大阪の新町にあるからです。
大阪締めに入る前に「会場のみなさまもご一緒にー」と呼びかけるので、場内のお客さんも手拍子で参加することになるのですが、「いおうてさんど」の後のあのリズムにはみなさん、ついてこれないようでした(笑)
私は、友達の披露宴などで大阪締めを経験してきましたから完璧(^_^)v
公演はあと2日間あるので、昼に観に行かれる方は、大阪締めの動画で予習してもいいかも(笑)
一條大蔵譚(いちじょうおおくらものがたり)
平家の時代の物語ですが、平家も源氏も出てきません。
常盤御前は源義朝の奥さんですが、義朝は平治の乱で死亡。子どもたち(義経)の命を助けるために平清盛の妻となります。
そしてさらには、この物語の主人公大蔵卿に下げ渡されます。
大蔵卿というのが阿呆で有名なお人。街の人が「お古もらってよろこんでるよ」と嘲笑しても気にしないで、狂言遊びに興じています。
常盤御前もへっちゃらな顔で新しい結婚生活の中にいて、揚弓遊び(小さな弓で的を射る)に興じるようなのんびりとした暮らしを送っています。
元家臣(源氏復興のために暗躍中)夫婦がある日、常盤御前のもとにやってきて、義朝への忠義はないのかと家臣のくせに常盤御前を打ち、責めます。
家臣の忠義が本物であることを知った常盤御前は、夫を亡くし、平清盛の元へ輿入れをし、さらに一條卿との結婚生活は辛いと、ここで初めて嘆きます。辛くないふりをしていたのです。
結末を書いてしまうと、常盤御前も大蔵卿も、源氏の再興のために機会を待っていて、大蔵卿の阿呆は阿呆のふりだったというお話です。平清盛の長男平重盛が亡くなったときこそ、みんなで決起して源氏を再興しようぜというお話です。
主人公大蔵卿を演じるのは白鸚さん(前 松本幸四郎さん)です。
白鸚さんが前半は阿呆のふり、後半の盛り上がるところではキリリとした大蔵卿を見せて、物語の最後にはまたふにゃふにゃとした阿呆ぶりを見せるのが面白いなあと思いました。階段の上り下りのときはちょっとドキドキしましたが(^_^;)
楊弓遊びをしていると思われた常盤御前、実は的の紙の下には平清盛の肖像画を隠していて、矢を放つと見せかけて実は、呪詛の気持ちを持ちながら清盛に矢を打つという仕掛けがあったりするのも面白かったです。(どういう仕組みなのかは私の席からは見えませんでした(笑))
このお芝居、若い役者さんは出てこなくて、かつ、中村屋ゆかりの人も出てこないので、あまり気合いが入らずぼんやりと見ていたのでした(笑)
入り口の頭上にもお正月らしい飾りが
夜の部は次の記事に書きます(^_^)