今日もよい日

ストレスのお薬としてのヨガ。お医者さんたちも、ヨガと瞑想に注目しています。

広島でお勉強してきました③ <久賀谷 亮先生>

 

 
今年の学会のタイトルは「呼吸と意識とヨーガ療法」。

 

今年もさまざまな先生方のお話を伺うことができました。

 

板書王の私も追いつけないすごいスピードでスライドが展開されていきましたが、がんばってメモを取りました。

 

開始時間を間違えて会場に入ったため、冒頭10分ほど抜けもありますし、私の頭では難しくてメモが取れなかったところもありますが、備忘録として残しておきたいと思います。

 

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 講演タイトル: 「マインドフルネスと今」

久賀谷先生はイェール大学を卒業したあと、ロサンゼルスで開業した精神科医です。臨床医としては25年以上のキャリアがあります。そしてご自身も実践されているマインドフルネスダイエットで、テレビにもお出になられています。今回はダイエットのお話はなく、日本人医師としてアメリカから眺めたマインドフルネスあれこれ、という感じでお話をされていました。

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なぜ今、マインドフルネスなのか

 

幸せ×GDP

 

豊かになれば幸せであるという比例関係が過去にはありました。 

しかしここ10年、日本やアメリカなど、豊かな国で幸せ度が落ちています。

 

2012年にアメリカのティーンエイジャーについて調べた結果です。

 

・幸せ度、睡眠時間、人とのコンタクトの頻度→下がる

・ネットしている時間、依存(タバコ、食など)→上がっている

  =便利になったデジタル化社会は、幸せ度を下げてしまった

 

 

このまいくと、2045年にはシンギュラリティ(技術的特異点)に到達します。

※シンギュラリティとは人工知能(AI)が発達し、人間の知性を超えていくことによって、人間の生活に大きな変化が起こるという概念

 

2045年頃にはメンタルの問題を抱える人が人類の50%に到達するという予測もあります。

 

現代はスピード、プレッシャー、承認欲求、執着、依存などがキーワードになっている時代。

 

これまで日本は西洋の真似をしてきたけど、これからは東洋の価値が見直され、女性的価値観が大事になっていくだろうと思います。

 

 

マインドフルネスブームの到来

 

ヨガのブームから遅れてやっとマインドフルネスのブームがやってきました。

 

これはみんなの意識が身体から脳へとシフトして、これまでは、生存できればよかったところから健康へ、繁栄することから幸せを目指すというのと同じ流れです。

 

人間の脳はここ1万年全然大きくなっていないのに、脳でのカロリー消費は20%も増えました。

 

そのカロリー消費の中には、過去や未来のことを考えてさまよっているという状態も含まれています(無駄使い)。

 

さまよう状態のことを『マインドワンダリング』と呼びます。

 

みんなが夢中になっているSNSは、脳を酷使することにつながっています。

 

『心がここにいない』ときは、脳のいろんな分野が無駄に使われているのです。

 

 

そこでマインドフルネス。

 

マインドフルネスをするとデフォルトモード・ネットワーク(脳が意識的に活動していない時間。車でいうとアイドリング状態)がよく休まるのです。

 

 

マインドフルネスでは注意を一か所に向けるということをします。

 

 

 

マインドフルネスをすることでの変化

 

脳の忙しさ→25%ダウン

疲れ→20%ダウン

睡眠の質→30%アップ

 

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<ここで陸上競技のハードル種目の映像>

ロロ・ジョーンズという選手の試合の模様です。

よいスタートを切り、順調にハードルを越えて行きます。

しかし残り1台のところで足をひっかけて減速。勝利を逃します。

 

ロロ選手「最後のあたりで『足をしっかり伸ばすように』と自分に言い聞かせました。」

→自然な流れを妨げてしまった結果の失敗

 

=『私の思考』と『私』は切り離すといい。

 

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マインドフルネスの実践は、思考を減らすのではなくて、『私の思考』と『私』を切り離せるようになります。

 

今どきの私たちは 

・『いいね』がほしい

・いつも渇望していて何かを欲しがっている

 →これでは幸せにはなれません。

 

マインドフルネスの実践は、後帯状皮質に働きかけるので、これらの欲求が鎮まってきます。

 

特にメッタ(慈悲)の瞑想はこの後帯状皮質の活動が鎮まる結果が。

 

 

マインドフルネスは心の落ち着き、セルフレス、叡智をもたらしてくれます。

 

8週間続けることで幸せ度がアップするのです。

 

 

今をどう生きたらいいのか

 

そのうち車の自動運転が普及します。

 

みなさんなら、空いた時間をどうしますか?

 

(会場の何人かに聞く)

・寝ます

・景色を楽しみます

 

それを聞いた久賀谷先生、「普通の人は『仕事します』という人が多いんですよ。」

(会場からは「えーっ?」)

「みんな健全だなあ(笑)」

 

この先AIが人間を支配するんじゃないかと心配している人もいると思います。

昔、自転車ができたときも同じような反応をしていたらしいです。

恐がらなくてもいいんです。

 

 

ポジティブ心理学の話をしますと、

 

①今を味わう、②時間にゆとりを持つ この2つで人は幸せになれます。

 

CNNのアンダーソン・クーパーというキャスターも言っていました。

「一瞬一瞬を生きることが長生きにつながります。私は取材旅行で世界のあちこちに行きましたが記憶はおぼろげです。なぜなら当時は一瞬一瞬を生きていなかったからです。」

 

 

そして ③感謝 ④親切 も大事です。

 

感謝の手紙を渡したり、すれ違った人の幸せを祈ったり、ボランティアや寄付もいいでしょう。

 

 

これからは ⑤感覚 ⑥身体性 が重要になってきます。

 

仏教に人が帰ってきます。仏教は身体と心を切り離さないからです。

 

 

 

講演の最後はクラシック音楽の指揮者の、とても繊細な手の動きを見ながらの、気持ちの良い音楽で締めとなりました。

 

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久賀谷先生は、難しい言葉を使ったりもなさっていましたが、会場の様子もちゃんと把握なさっていて、ときどき脳を休めるための瞑想(イメージ瞑想)を入れてくださいました。

 

・目を閉じます。目の前に温かいココアがあります。それをフーフーと冷ますイメージを。

・目を閉じます。綺麗な花がここにあります。いい香りに注意を向けてみましょう。

 

そして、講演の最初の方でIT時代の変遷みたいな年表が出てきたときに『2003年 ヨーガ療法学会設立』と表に入れてきてくださっていて、これはきっと会場のみんなの心を捉えたんじゃないかと思います(笑)

 

中島正明先生からマインドフルネスヨガを教わった時も、デフォルトモード・ネットワークなどの難しいお話がありましたが、今回、久賀谷先生のわかりやすいお話を聞いて、理解が深まった感じがします。

 

場に合わせて話のレベルを変えて下さっているのだと思いますが、なるほどど思える新しい知識もありつつ、とても楽しい講演でした。