今日もよい日

ストレスのお薬としてのヨガ。お医者さんたちも、ヨガと瞑想に注目しています。

壽 初春大歌舞伎 夜の部を観ました(歌舞伎座)

 

 

今月は昼の部に松本鸚さん、夜の部に中村吉右衛門さんが出演されています。

私がよく観る中村屋メインの公演ではなかなかお目にかかることができない重鎮たちです。

 

鸚さんと吉右衛門さんが兄弟(吉右衛門さんが弟)ということと、兄弟なのに共演することがないということを、歌舞伎を観るようになって初めて知りました(笑)

 

 

 

残すところあと2日となった一月の歌舞伎座、夜の部について書きます。

 

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絵本太功記(えほんたいこうき)

 

明智光秀のお話です。光秀を吉右衛門さんが演じます。

光秀は、本能寺の変の後に、秀吉を見つけ、闇討ちをしようと庭から竹槍を差し入れますが、そこにいたのは自分のお母さん。

さらにはその場に、戦争で深手を負った息子(幸四郎さん)もやってきます。

死にそうになっている息子に気付け薬みたいなものを飲ませて、負け戦の様子を語らせます。語ったあと息子は絶命、竹槍が胸に刺さったお母さんも亡くなる、という救いのないお話です(^_^;)

吉右衛門さんが階段を上り下りするときにまたもや心配になって(笑)、でもセリフなどは力強くとても若々しいのです。死にそうな息子に気付け薬を飲ませてまで戦の様子を語らせるというのは、酷い親だなあと思ったりも。

瀕死の幸四郎さんはお化粧に赤や青を使っていますが、なぜだかとても美しく見えて、とても戦から逃げ帰ってきた男という風には見えませんでした(笑)

 

 

勢獅子(きおいじし)

 

舞踊の演目です。日枝神社山王祭の日に、鳶頭や芸者さんたちがみんなで踊ります。

たくさんの人たちが舞台上に勢ぞろいして、楽しい感じですすみます。

翫さんとその息子福之助さんと歌之助さんが出演されています(長男の橋之助さんは、鶴松さんもお出になっている浅草の若手の歌舞伎に)。

後半、獅子舞が登場するのですが、中に入っているのは、このご兄弟なのかなあと。獅子の首元が透けていて、獅子の中から外の様子が見られるようになっているのですが、透けた先に福之助さんが見えたような。

すごく元気に飛び跳ねて、おめでたい感じの獅子舞なのですが、登場している時間が長いので、後半、ちょっとしんどそうでした(笑)

鳶頭、鳶、芸者さんがそれぞれ見せ場を作って踊っているのですが、自分の出番じゃないときは、座って踊りを眺めています。

そんな中でお名前を知らない若い方が、とても楽しそうに可愛いお顔で他の人の眺めているので『あの可愛らしい子は誰?』と筋書で確認してしまいました(笑)

中村玉太郎さんという方で、屋号は加賀谷。私が観る演目(中村屋メイン)ではあまり聞かない屋号です。お父さんは中村松枝さん、おじいさんは中村東蔵さんなのだそうです。今月は3代揃って歌舞伎座ということですね(^_^)

 

 

松竹梅湯島掛額(しょうちくばいゆしまのかけがく)

 

お正月にNHKで歌舞伎中継をしていて、この演目を観てしまったことで、ノーマークだった1月に歌舞伎座に足を運ぶこととなったのでした(笑)

 

べんちょう(紅長)さんを猿之助さん、八百屋お七七之助さんです。お七が恋い焦がれる小姓の吉三郎が幸四郎さん。この組み合わせ、最高だなあと思います(笑)

 

木曽の軍勢が攻め入ってきて、べんちょうさんとお七たちはお寺に逃げてきます。

お七はひな祭りの日に初めて出会った吉三郎と結婚したいと思っていて、この非常時にお母さんにそれを告げますが、吉三郎はいずれ出家する身なのだから結婚できないんだよと諭され、お七は泣きます。

お七がとても美人だという噂を聞いた源範頼が自分の嫁にしたくて、家来たちにお七を探させます。ここはべんちょうさんが機転を利かせます。欄間の天女の絵を外して、そこにお七を座らせ天女のふりをさせ、難を逃れます。(すぐにばれそうなのにばれないのが歌舞伎(笑))

吉三郎はいまは小姓ですがもとは武士。家の宝刀を失くしてしまい、探しているという設定です。

木曽の軍勢が去ったあと、二人はお寺の本堂で話をして、お七はグイグイと吉三郎を口説くのですが、吉三郎は及び腰。でもお七の恋を応援するべんちょうさんのとりなしもあって、二人の恋は成就することとなり、実は武士であること、失くした刀が見つからないと吉三郎は自害しないといけないことをお七は知ります。

時が流れ、年末。年内に刀が見つからないと吉三郎は死ななければいけません。

お七の家に来ている客が、その刀を持っているということを下女から聞いたお七は、それを盗むことにします。盗んだ刀を吉三郎に届けたい。でも当時は夜になると木戸を閉めてしまい、夜の移動は禁止されていたのでした。木戸を開けるには夜が明けるか、火事になるか。一刻も早く刀を届けたいお七はご法度とされる、火の見櫓の太鼓を火事でもないのに叩き、木戸を開けさせ、刀を持って雪の中を走り出す、というところでお話は終わります。

無事に届けることができたのか気になるところです…。届けたところでお七は罰を受けなければいけないのですが。

 

テレビ中継でご覧になった方はおわかりかと思いますが、前半に登場する猿之助さんが本当におもしろくて(笑)

テレビ中継では出てこなかったソルマックネタには場内大笑い。

美しい七之助さんを観るために歌舞伎座に来ているのに、後ろのほうでコソコソとおもしろい顔をしたりしぐさをするのでつい見てしまいます(笑)

また、肉食お七が吉三郎さんを口説くところでは『気を失うふりをしろ』とお七にジェスチャーで指示を送り、それを見たお七が気を失ったふりをすると、今度は吉三郎に「このままではお七どのは死んでしまいますぞ!さあ、お水を口移しで飲ませるのです!」と舌をべろべろと出し見本を見せつつ提案したりしています(笑)

七之助さんだけを見ていたいのに、いつのまにか猿之助さんの姿を見ている(笑)

お土砂をかけて敵をふにゃふにゃにする場面では、附けを打つ人がしつこく戦わせるので(これもおもしろい)、へとへとになった猿之助さんが、お土砂を附け打ちの人にかけたりして、芝居の中に引き込んでいきます(笑)

 

みんなが大笑いする前半とは打って変わって後半の場面。お七がメインです。

ここは途中で人形振りといって、それまで普通に話したりしていたお七が、文楽人形のように黒子に操られるような趣向でお芝居が進んでいきます。

七之助さんは背が高いので、それなりに体重もあると思うのですが、ピョンと飛んだのを黒子2人で支えたりして、これは腰が痛くなりそうだなあと余計なことを思いながら見ていました。

人形になった七之助さんは、鼻筋がまっすぐなのもあって、お顔は本当に文楽の人形のようです。まばたきもしてないようだったので、私もまばたきをせずに、七之助さんがまばたきをする瞬間を探しました(笑)

NHKの中継の日、いつもより張り切ってまばたきをせずにいたら、目の乾燥でコンタクトレンズが取れてしまって、それがカメラに映らないようにとすぐに払ったという話を、中継の最後に行われた生インタビューで七之助さんはしていました(笑)

カクカクと動く人形のような七之助さんはとても綺麗でした。本当に操り人形になったかのよう。目や身体にどれくらいの負担がかかるのだろう、毎日やってて大丈夫かなと思ったりも。

人形振りの場面が終わり、花道あたりで人間に戻ります。雪が降りしきっていて、綺麗な七之助さんを飾ってくれます。

血の通った人間に戻った七之助さんは、お芝居の前半の、頼りなく世間知らずなお嬢様な感じはもうなくて、ときどき強く降りつける雪にたじろいだりもしますが、好きな人のために必死で強い女に変わったことがわかるお芝居でした。

 

この演目を観たくて歌舞伎座に来たので、猿之助さんの観客の心を掴むおもしろさと、七之助さんの凄さを見ることができて、本当によかったなあと思いました。

あ、幸四郎さんの演じる吉三郎は、昼の部の伊左衛門によく似たつっころばし。なよなよした男性で、こういう役もお上手だなあと思いました(笑)

 

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