今日もよい日

ストレスのお薬としてのヨガ。お医者さんたちも、ヨガと瞑想に注目しています。

『ふるあめりかに袖はぬらさじ』 を観ました(シネマ歌舞伎)

 

 

シネマ歌舞伎『ふるあめりかに袖はぬらさじ』を観てきました。

 

大阪のなんばパークスシネマで観たのですが、なんと上映15分前には札止め。満席になっていました。

 

私は事前に席を買っておいたのでよかったのですが、観ようとおいでになった女性3人組がスタッフさんに「もう入っていただけないんですよ…」と言われていて、途方に暮れているのを目撃しました…。

 

解説つき上映の日ではなかったのですが、この人気。

 

いつものシネマ歌舞伎のときよりも小さい部屋だからかな。

 

観たい方は早めにおでかけになるか、インターネットで席を確保したほうがいいように思います。(上映は 16日金曜日までです)

 

 

あらすじ

幕末の開港間もない横浜にある「岩亀楼(がんきろう)」。病床にあった花魁(おいらん)の亀遊(きゆう)は恋仲の通訳・藤吉(とうきち)の励ましで快方に向かう。

ある日、薬問屋の大種屋に伴われ岩亀楼に来たアメリカ人イルウスが、大種屋の相手である亀遊を身請したいと言い出す。その交渉を通訳する藤吉は苦悩するが、結局イルウスが亀遊を身請することになる。しかし身請されることにより藤吉との恋が成就しないこと知った亀遊は自殺してしまった。

尊王攘夷派(物語の中では「勤皇」と呼ばれる)と開国派(同「佐幕」)とが激しく争っていた当時、亀遊の死は異人に買われる事を嫌ったためと瓦版に書かれ、もてはやされた。読み書きできない亀遊の「露をだに いとふ倭(やまと)の女郎花(おみなえし)ふるあめりかに袖はぬらさじ」という辞世まで捏造される。「攘夷女郎(じょういじょろう)」のいた岩亀楼はその話を聞きつけた客で賑わい、亀遊の幼馴染みである芸者のお園(おその)は亀遊の自殺の真相を知りながらも「攘夷のヒロイン」の話を客に語る事になり、その話も次第に脚色が重ねられることになる。(Wikipediaよりお借りしました)

 

有吉佐和子さんの書いたお話で、セリフも口語調のものも多く、わかりやすかったです。

 

 

それぞれの役柄について

 

主人公と中村屋は最後にします(笑)

 

通辞藤吉:中村 獅童

よく言えば優しい、悪く言えばなよなよした通訳(通辞)さんです。横浜の遊郭には外国人のお客さんが来るようになっていて、その外国人のお客さんとお店や遊女の間を取りまとめるのがお仕事です。亀遊を好いてしまったので、イルウスという外国客が身請けすると言い出したときに、なよなよしてしまい、結果、亀遊を永遠に失います。「どうして二人、夜逃げしなかったのだ!」とお園に責められますが、でたらめの瓦版によって救われた気持ちになり、そのあたりは男って酷いなあと思いました(^_^;)

 

唐人口マリア:中村 福助

「とうじんぐち」のマリアさんです。唐人口というのは、外国人専門の遊女です(劇中では「らしゃめん」と呼ばれたりもします)。外国人と交わった遊女は、それからずっと日本人の相手をできなくなるというルールがあるそうで、成り手がいません。見た目がちょっとあれな人たちが担当します(^_^;)

福助さんはいちばん派手な出で立ちで、動きもなかなか激しいのです(笑)

 

イルウス:坂東 彌十郎

外国人役がぴったりです(笑) 英語のセリフも出てきますが、あやしいです(笑) 亀遊の身請け話を通訳の藤吉を交えて、遊郭の主人の勘三郎さんとやりとりするのですが、なかなかコミカルでおもしろかったです。

 

浪人客 佐藤:市川 海老蔵

5分くらいの出番ですが、存在感あるなあと思います。腹から声が出ていて、尊王派の元お侍さんという感じがします。

  

幇間和中:市川 猿弥

猿弥さんです(笑) プロフィール写真が詐欺写真と言われて久しいのですが、すでにこの頃、まるっとしていて、今の体型です。プロフィール写真はいったいいつ撮ったものなのでしょう(笑)

 

唐人口 バタフライ:尾上 松也

メリーとかチェリーとかピーチとか言う名前の5人の唐人口(外国人専用という意味)の遊女が出てきますが、外国人客が覚えやすいという理由でこの源氏名なのです。激しい出方をするのですが、松也さんと新吾さん(凄くグラマラス(笑))だけはなんとなくわかりましたが、他の人は区別がつかず(^_^;)

 

忠誠塾 小山:中村 芝翫

この頃のセリフの言い方は今と違ってくどくなかったなあ、と何かのシネマ歌舞伎のときも書きました(笑) いまのねちっこいお芝居は、これからずっと続くのでしょうか。よくわからないです(^_^;)

 

 

忠誠塾 岡田:坂東 三津五郎

岩亀楼主人:中村 勘三郎

鬼籍に入られたお二人です。他のシネマ歌舞伎でお姿を見ると、ちょっと涙が出てきちゃうのですが、今回の演目ではほとんど涙が出ず。玉三郎さんのお芝居が素晴らし過ぎて、目立たなかったのかなあ。

 

 

芸者お園:坂東 玉三郎

主人公です。七之助さん演じる悲劇の花魁亀遊とは旧知の中。亀遊が禿(かむろと読みます。遊郭に住む小さな子供のことです)のころから知っていて、どんな家に生まれ、どういういきさつで吉原に行き、品川を経て、横浜の岩亀楼に今いるのかも知っています。このベースがあるから、亀遊が亡くなり、謎の瓦版が出回って以降の大袈裟な立ち振る舞い方が際立ちます。亀遊のことを想い「可哀想に。寂しかっただろうねえ。」とみたいなセリフが何度も出てきますが、あれは自分の今を重ねているのだと思いました。お園も吉原にいたころは、少々遅刻しても叱られないような三味線の名手。でも時が経つに連れてその輝きが少しずつ失われ、でもちやほやされていたときのことは忘れられない。亀遊とお園は年齢も立場も違いますが、同士なのだろうと思いました。

玉三郎さんは三味線と唄が本当にお上手。完全に女性です。コミカルなお顔もなさるので、客席がどっと沸いたりするのですが、ちょっと違和感を(^_^;) ←後述します。

 

 

忠誠塾 飯塚:中村 勘九郎

尊王派のお侍さんで、まだ年若いという設定のようです。声が高い(笑) この頃の発声を聴いていると、お父さんとは全然違います。若い設定だからなのかなあと思いましたが、先月の酒呑童子はもっと若い(というか、がきんちょ(笑))はずなのですが、お父さんみたいな声の出し方をしていました。お父さんがいなくなって、真似をする(変な意味ではなくて)ことで、お父さんに近づいているのだなあとしみじみ思いました。

 

 

遊女亀遊(ゆうじょ きゆう):中村 七之助

可哀想な役です。最初は吉原で働いていたのですが、おとなしくて積極性がない性格なのもあって、あまりお客が付きません。流れ流れて横浜にたどり着いているのですが、病気のために客を取ることもできず、階下の暗い部屋に押し込められています。病気の噂で部屋に近づく人たちがいない中、お園と藤吉だけはおしゃべりをしたり、ごはんや薬を運んでくれます。藤吉に淡い恋心を抱いていますが、遊郭の女になった以上、お医者さんになろうとアメリカに行きたい藤吉のお役に立てないと悲観します。藤吉と心が通じ合った翌日に、アメリカ人による身請け話が立ち上がり、好いた男を諦めなくてはいけない上に、外国人に身体を任せるくらいならと自害します。

アメリカ人イルウスに追いかけ回されるところが、最後の出番(^_^;) それ以降一度も出てきません。

病弱な女性を演じるためにそうしているのかわかりませんが、肩幅がとても狭いのです。そして今よりもずっとか細い身体のラインです。顔も痩せていて、幸薄そうではかなげな女性です。でも、藤吉と一緒にいるときは、とても幸せそう(^_^) 可愛らしさと謙虚さがあって、でも思い切るところは思い切る。しかし、本当に可哀想な役だなあ。

 

 

印象に残った場面

 

芸者衆

シネマ歌舞伎HPの動画にもあるのですが、芸者衆がみんなで三味線を弾いて唄う場面。三味線専門の人たちではなくて、歌舞伎役者さんが芸者の役を演じながら弾いたりしているのです。すごいなあと思いました。

 

いちばん最初の場面

まっくらな部屋に伏している亀遊。そこへお園が入ってきて、雨戸を開けます。本物のおひさまみたいな光が一筋さーっと入ってきます。歌舞伎の舞台ではないみたいな感じがして不思議でした。

 

お園、だんだんと大袈裟になっていく(笑)

謎の瓦版を初めて見たときは「私が見たのはこんなんじゃない、嘘ばっかりだ」というスタンスなのですが、遊郭の主人の意向(噂を聞いた客がたくさん来るのでお金儲けしたい)を汲んで嘘をつき始めます。初めのころはうっかりと「深川の町医者の…」と口走ったりしますが、最後の方では「どこのおうちかは最後まで明かしませんでしたが、さすかは武士の娘!立派に本懐を遂げたのでございますー!」と調子にのっていくのです(笑)

なぜ嘘に嘘を重ねていったのか。

それは、耳を傾けてくれる人がいるから、また、もっと自分を見てほしいという承認欲求から。

長年満たされていなかったその部分が、お話を盛って聞かせることで、満たされていく。

お園の心の中は、そんな感じなのではないかと思います。

 

 

七之助さん

前半しか出てきません(^_^;)

私はここ2~3年の七之助さんしか知らないので、シネマ歌舞伎はありがたいなあと思います。

恋する女の目がとても上手。あんな目で見つめられたら、男の人はたまらないと思いました(笑)

 

お客さんたちが、脊髄反射で爆笑すること

これは気になったことなんですが(^_^;)

玉三郎さんがとてもコミカルなお顔をなさったり、動きをしたり、怯えたりします。

その状況になるまでには悲しい伏線が必ずあって、その伏線を思うと、コミカルさに即爆笑することは私にはできませんでした。

私はお話に入り込み過ぎてしまって、いつも泣いているのですが、それもどうかと自分では思っています(^_^;)

 

ゆでたまご と お茶

病気で弱っている亀遊に、お園がゆでたまごをむいてくれる場面。ゆでたまご、本物なんです(笑)

器の側面に玉子を打ち付けて、おしゃべりしながら玉三郎さんがむいてくれます。

上2/3くらいむけたところで七之助さんに手渡します。

ここで私は『公演中は毎日、ゆでたまごを食べてるのかー』と思ったりしていたのですが、七之助さんはほんのちょこっとかじったかかじらないか(^_^;)←食べてない(笑)

シネマ歌舞伎だから見られる細かいところです(笑)その後、お園がお茶を煎れてくれるのですが、それはエアー(笑)

でも、本当に湯呑みにお茶が注がれているような錯覚が起こりました。

別の場面では、お茶ではなくお酒を玉三郎さんがぐびくびと飲み干すのですが、本当に飲んでいるような唇の動きと、喉の動き。すごいなあと思ったのでした。

 

 

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観に行ってよかったなあと思いました。最後、泣いてるのは私だけでしたが(^_^;)

 

2007(平成19)年に歌舞伎座で上演されたものなので、みなさんお若いです。

 

 

上映時間は164分(2時間44分)。

なんばパークスシネマだと13時ちょうどから16時5分まです(^_^;)  3時間5分もあるー

 

でも安心してください!!途中10分のお手洗い休憩があります(笑)

 

お手洗い行きたくなくても、座りっぱなしだとおしりや腰が痛くなります。

 

座席から立って、ちょっと歩いたりしましょう(笑)

 

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次回予告(笑)

 

『ふるあめりかに~』終了後に予告篇が流れました。

 

勘三郎さん主演の 野田版 鼠小僧です。2003年の演目です。

 

www.shochiku.co.jp

私はまだ観たことがないので楽しみなのです。中村屋兄弟ももちろん出演しています。

 

12/29~1/4という、歌舞伎を観そうな層の忙しさを全く無視しているスケジュールだと思っていたのですが、なんばパークスシネマでは、1週間前倒しの 12/22(土)から始まるのだそうです。終わるのは同じ1/4(金)。

※この演目は解説付き上映日はありません

 

都会の大きな映画館では前倒し上映があるようですから、確認してみるといいと思います(^_^)