NHKの番組の中でよく見るのが「プロフェッショナル 仕事の流儀」です。
6/4の放送で取り上げられていたのが絵本作家のかこさとしさんでした。
これまでに500冊以上の絵本を世の中に出してきた、プロフェッショナル中のプロフェッショナルです。
若い担当者さんが「(年齢のこともあるし)そろそろ仕事を休まれてはいかがですか?」と言うと、「死んでから休みます」とユーモア混じりに返すような人だったんだそうです。
かこさとしさんは今年の5月2日にお亡くなりになりました。92歳でした。
「だるまちゃんとてんぐちゃん」シリーズは、私も子供のころからよく読んでいた絵本でした。
密着は3月11日から4月11日までの1か月間でしたが、ご本人もご家族も、死期が迫っているのを悟っていて、最後の記録になるであろうと、取材に協力していたのだそうです。
(取材最終日から21日後にお亡くなりになりました)
かこさんの絵本の特徴
かこさとしさんの絵本の特徴として2点あげられていました。
・登場人物や小物の数が多く、どれもが丹念に描かれている
・考え抜かれた起承転結
「こどもは物事のすみずみまでを観察していて、わずかな緩みにも気付いてしまう。
でも、”こどもさん”をあなどることなく丹念に作りこめば、素直な反応を返してくれる。それが原動力になっている。」
ということを、インタビューの中でおっしゃっていました。
かこさんは、東京大学工学部で学んだのち、総合化学会社に技術者としてお勤めされてきたそうです。
編集者さんとの打ち合わせの中でも、例えば、水滴は絵本などに見るぴちょんくんみたいな形ではなく、正しくは球体であるというところにこだわりを持って、優しく諭したりしていました。技術者らしいこだわりです。
そして、かこさんが絵本作家になるまでの物語も
かこさんが19歳のとき、戦争が終わりました。
戦前と戦後で、手のひら返しのように態度を変えた大人。それを見てこどもたちはどう思っていたか。
これからのこどもは、大人の言うことを聞くばかりではなくて、こども自身が自分で考える力を持ってほしい、と思ったそうです。
大人としての自分も罪人の一人であると思ったかこさんは、戦争が終わった時に、これからは、こどもたちのために命を使うと誓いを立てました。
だから死ぬまでちゃんとやるんだと。
こどもの応援団になれるかもと思い、得意だった絵を使って紙芝居のボランティアを始め、それが評判を呼び、33歳で絵本作家に。
41才でだるまちゃんとてんぐちゃん、47歳でからすのパン屋さんを発表。
ただこどもたちのために。
こども相手の本だからと言って妥協はしない、というのがかこさんの信念です。
「宇宙」を購入しました
番組の中で「宇宙」という絵本が登場します。
こんな風に紹介されていました。
ノミのジャンプから始まる。そこからさまざまな生き物の跳ぶ距離や飛行機などが飛ぶ距離や、その速度へと話が展開していく。さらにロケットによって一気に宇宙へ。読者はいつのまにか150億光年の宇宙に連れ出される。
紹介されている絵と、このナレーションでイチコロ(笑)
購入して、読んでいますが、本当に丹念に作り込まれているし、大人の私でもとてもおもしろいです。
かこさんの話し方
インタビューの中でのかこさんの話し方が、とても優しく素敵で、誰に対しても謙虚なことにも驚かされました。
「こどもさんにいろんなものを読んでいただければと思って描いてきたんですけどね。こどもさんというのはね、おもしろかったよ、というのをしまっておけない。
そういう反応がでるようなものを描かなければいけないということを、逆に言うとね教えられたんです。こどもさんの反応がでるような物を書かなければ意味がないよということを示してもらったのです。」
「これでもいいよと出版社さんが言ってくださるのならば、お手数ですけど進めていただいて結構だと思うんですけど。こんなところでお許し願おうかなと思います。」
取材スタッフに対しても、取材の最終日にこんな声掛けをします。
「おはようございます。長いことご苦労さんでしたね。」
決して偉そうではなく、いつだって優しさに溢れているなあと感心しました。
番組恒例の『プロフェッショナルとは』については。
「宿題がいっぱいあるんですけどね。いろんな発想はするんだけど、完全にね仕上げるまでがとってもつらくて。」
こどもの目線に立って丁寧に絵本を仕上げていく かこさとしさん。
最後の最後までみずみずしい感性を持った作家さんでした。
『”ちいさいこどもさん”の未来のために』最後まで創意工夫を続けたすごい人だということを、番組を見て知ることができました。
ご冥福をお祈りしたいと思います。