とても大事なことなので、長くなりますが、前置きを書いておきます。
NHKの「東洋医学科学のチカラ」では、がんの治療プログラムにヨガが取り入れられていることを紹介しています。
がん患者さんたちがヨガを経験してみて感じた、よい効果について語ってくれています。
「そうなんだ!ヨガはがんにいいのね!」と飛びつく前に。
ヨガにはたくさんの流派ややり方があります。
がんの患者さんにいいヨガは、一般的に広まっているヨガとは少し違います。
大きな病院の中に入っているヨガ教室なら、お医者様と連携があると思うので恐らく大丈夫だと思いますが、私たちの身近なところで気軽に参加できるヨガには、ヨガががんによいという科学的根拠につながらないスタイルも多いのではないかと思います。
前の記事に意地悪な感じで書きましたが、仲さんがお習いになっている呼吸法はその流派では あり だとしても、医療の専門家からすると「それは違いますよ」というものであったことからもわかります。
がん患者さんでも安心して参加できるヨガ、ストレス軽減をいちばんの目的としたヨガをお探しの方は、ヨーガ療法 または ヨーガ・セラピーの先生の元をお訪ねになるといいと思います。
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第二部 ヨガ(がんの患者さん向けに)
仲さんはヒューストンにあるMDアンダーソン がんセンターを訪ねました。
何年か前、私のお師匠さんも訪ねたことのあるがん専門の病院です。
治療の一環としてヨガが用いられています。
(今年仙台で行われたヨガの学会が北海道開催だった年、この病院からロレンツォ・コーエン先生がいらして、講演して下さいました。)
仲さんがヨガの部屋を訪ねたときは、抗がん剤治療中の男女5人がヨガをしていましたが、この映像をお師匠さんが見たら「これはいったい何をしてるの?」と言うと思います。
ゆっくりとした太陽礼拝をしているからです。
おまけにアジャスト(ポーズの修正)までしています。大事なことはポーズじゃないのに。
笑顔でポーズをする、というアドバイスと、片鼻呼吸法(アヌローマヴィローマ)、睡眠障害のくだりで放送されていた動きはいいなあと思いましたが。
(免疫力アップと自律神経のバランスを整えるためによいのです。)
この病院では主に睡眠障害の治療にヨガを取り入れているそうです。
実は抗がん剤治療をしてる人のおよそ80%が睡眠障害(眠れない)に陥っていると言われています。
睡眠障害になると、体力だけでなく、気力までもが落ち、治療を放棄してしまう場合があるそうです。
患者さんの命に関わる、重大な障害です。
ヨガのストレス軽減効果で、睡眠障害を減らせないか、ということでこの病院ではヨガを取り入れています。
ヨガのプログラムを1年間続けた74人を調べたところ、眠気による生活障害の程度が2割ほど減ったのだそうです。
患者さんも率先してヨガに参加している、とナレーションにありました。
参加している患者さんの声です。
「やればわかるけど、ヨガは魔法のようです。おかげで放射線治療、抗がん剤治療、すべてできるようになりました。治療と一緒にヨガをするべきだと思います。」
「ヨガはがんの治療中、心身共に私を助けてくれました。心が強くなり、身体の動きもよくなっています。本当に元気いっぱいなんですよ。」
他にも がん治療後の人も、ヨガをすると痛みも和らいで夜よく眠れるようになった、伸ばすと痛いと思っていたのに、痛みが全然なくなってしまう、と言っていたそうです。
続いて、島根大学の大野先生がスタジオでなさっていたコメントです。
「臨床試験の結果が出てきたこともあり、アメリカでは多くの大学病院やがんセンターでヨガのプログラムは取り入れられているという報告があります。
日本でも数は少ないのですが、一部の大学病院などでヨガ教室という形でのプログラムが最近始まっています」とのことでした。
番組のまとめはここまで。
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話が前後しますが、MDアンダーソンでヨガをされている方は、がんに罹患していますが、比較的元気そうな方ばかりでした。
まだ身体の曲げ伸ばしができるし、自分の足で立つこともできます。
睡眠障害の治療にヨガをしているとのことでしたが、おそらく免疫細胞の数値もよくなっているはずです。
では、身体を動かすことがむずかしかったり、また、寝たきりの人にはどうしたらいいのか。
ヨガは椅子を使ってもできますし、身体を動かすことだけがヨガなのではありません。
実は、私も2人のがん患者さんにヨガをお伝えしてきた経験があります。
抗がん剤治療をすることでリンパ球の減少が起こることがあるのですが、寝たままの患者さんに呼吸法のやりかたをお伝えして、続けていただいたことで、リンパ球の数値が上がったこともありました。(主治医の先生が不思議に思って患者さんに「何かしてるの?」尋ねたのだそうです。)
そして、ヨガには瞑想法という とても大切なものがあります。
がんにかかると怒りっぽくなることも多いです。
怒りっぽくなった患者さんにお題瞑想をしていただいて、瞑想の結果を聴かせていただいているうちに、穏やかになっていく過程も見てきました。
怒りっぽかった患者さんが穏やかになっていくことは、患者さんご本人だけでなく、患者さんのご家族にとってもとてもよいことです。
私は、患者さんだけでなく、患者さんを支え続けているご家族向けのヨガというのもあっていいと思ったりもしています。
今回の番組は、がん患者さんに対して実はヨガが有効なんだよ、ということを世の中に知らせてくれたという点では大変ありがたい番組でした。
大野先生もおっしゃっていましたが、
ヨガはポーズだけではなく、ポーズに呼吸と瞑想を組み合わせることで、よい結果が期待できます。
長い期間にわたって強いストレスにさらされると、免疫系がおかしくなって身体の病気になります。心も壊れてしまいます。
もともと持っている病気の症状も強く現れるようになり、悪化します。
ヨガをすることは、がんの患者さんだけでなく、ストレスフルな現代人にとっても、とてもいいものだと思っています。
関西にお住まいの方だと、吹田に統合医療の病院があり、ヨーガ療法を受けることができます。
阪大でもヨーガ療法が行われています。